玉猫戦隊オーブファイブ ネズ神博士登場(6)

 ネズ神博士登場(6)

「ネズボルト、起きろ! あっちの男を踏み潰せ!」
「ブギャーッ!」
 ネズボルトは、のっそりと起き上がり、尾藤と肇間の方に向かってきた。
 一旦起き上がると、体の大きさの割には機敏な動作だ。
「あぶない!」
 レッド・ミキは咄嗟にオーブロボを方向転換した。しかし。
「何よ、コレ。操作が重たい!」
「伝送システムは異常ないわ。でも、確かに反応が鈍いのよね」
 ブルー・ユウカがいうと、他の3人もうなずく。
「エネルギー系統は順調なはずなのに、なんか、じれってぇだ」

:-

「いや、大丈夫だ。もう少し引きつけて、砕く!」
 肇間は、不敵な笑みをうかべつつ、オーブロボに伝えた。
「尾藤さん!」
「えぇ。同時に撃ちましょう」
 迫り来るネズボルト。
「……行きますよ! ってぇいっ!」
 ボゥォム!
 肇間の合図で、派手な音のバズーカ弾と無音の超伝導レーザーが絡み合ってネズボルトに当たる。
「ブギャァァァァ!」
 今度は、ネズボルトは倒れるのみならず、崩れて瓦礫に戻っていく。その瓦礫の片々は、まだ名残で、ピクピクと振動している。
 降り散る瓦礫の狭間で、淑大僧正が拳を握り立っている。
「うぉぉぉぉっっっっ!」
 仁王立ちし、体中を震わせて、絶叫。
「尾藤! 正々堂々とサシで勝負せよ!」
「散々、卑劣な真似をしておいて……吉行! 今さら何を言っている!」
 尾藤ならずとも、飽きれている。
「うるさい、負け惜しみを!」
「相変わらず、訳の解らないやつだな。俺は、貴様と違って、ズレたプライドなど持ってないだけだ! 吉行……いや、淑大僧正! 空元気もたいがいにしろ!」
「こしゃくな!」
 図星だ。精一杯対峙しているが、杖を消された大僧正は、能力が半減している。
 それでも、顔を硬直させて、体を痙攣のように震わせ、威嚇している。
「うぉぉぉぉっっっっ!」
 再び絶叫した淑大僧正の体が、ぼぅっと鈍色(にびいろ)に発光すると、発光と同じ色のオーラが湧いた。まさに「湧く」という雰囲気の邪悪なオーラだ。
 さらに、淑大僧正の姿が、しだいに揺らいでいく。

「なんなの!?」
「なんか、気持ち悪いわ」
「大僧正、溶けていきますね」
「踏み潰してやっか?」
「だめよ。肇間さん・尾藤さんのあんな近くじゃ……」
 オーブボロの中で5人は為す術なく黙っている。
「……今のこのロボの反応度だと、細かい制御に自信が持てないでしょ……」
 ミキは、くやしそうに唇を噛みしめた。

 淑大僧正の体は、いよいよ陽炎のように半透明になってきた。
 両手で印を結び、なにやらマンダラのような物を唱えている。
「融っ!」
 その一声と同時に大僧正の体が、半透明のままひと回り膨れ上がり、傍らの瓦礫の山に飛び込んだ。
 瓦礫がモコモコと動く。
「融合か!?」
 尾藤がいう。
 そう。淑大僧正は、最後の力で、ネズボルトとの能力融合を謀ったのだ。
「ブギャァァ!」
 またしても、ネズボルトが再生され、立ち上がった。しかし、今度は、腹の辺りに、淑大僧正の顔がある。
 その「顔」が口を目一杯裂かせて、喋る。
「尾藤! せめて貴様の骸でも、邪魔皇帝陛下の元へ捧げるのだ!」
「意味不明だなぁ。あいつの頭はネズミ以下ですね」
 肇間はあきれ顔で、バズーカを構えた。
 ボゥォム!
 弾を受けて、大僧正の「顔」は大きくひしゃげた。そのままで、笑っている。
「気色悪いやつだな」
 その時。
『アト 2分デ ソチラニ 到着シマス』
 タンタンからだ。間も無くオーブクローラーが来る。
 微かな轟音が聞えてきた。

 (7)につづく

 玉猫戦隊オーブファイブ 第13話「出た!最強最悪の新幹部登場だぞ!」より

ねこぱんち!
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コメント

  1. びといん より:

     だらだらと引き伸ばしてすみません。
     予定通り(?)、このエピソードは10回連載まで行くかも(笑)。

     それと、無謀にも主役5人の絵も公開しちゃいます……。
     しかもExpression3を使って描いた、初のドロー系イラストです。
     で、本当に、ごめんなさい。毎度のように、全身は描けないのですが、今回の独自デザインは、お玉さんの公式イラストから大きく崩れないように俺なりに考え、レッドとパープルのディテールを基本線としていただき、統一デザインとしました。

     さて、次回は、いよいよ強化パーツ「猫背」が登場です。
     おたのしみに。
     君のハートに、オーブフラッシュ!

  2. 【玉猫戦隊オーブファイブ】 メイン・リンクリスト (全171編 増加中)

    最終更新日:2004.12.10 AM01:30タイトルをクリックすると主題歌が聞けるよ! 「玉猫戦隊 オーブファイブ」をご愛顧いただき、有難う…

  3. ぷよぱぱ より:

    ★びといんさん
     淑大僧正、あがいていますねぇ。^^
     かなり盛り上がってきて、わくわくデス。
     一番結末に、ちびっと、伏線を張ってほしいので、後で連絡します。
     ではでは。

  4. すしバー より:

    ドローでこんだけ描けるのはうらやましいなぁ・・・。今だ、ペジェを攻略できてません。
    今回は、ネズボルトの動きがいいですね。とうとう吉行が人間捨てましたし。

  5. agrico より:

    おぉっっ!・・・この絵・・・

    すごい絵じゃないですか!
    今までのイメージを一新しそうな強烈なインパクトですね。
    さらっとした中に、爽やかな雰囲気を醸し出している。
    将来オーブ・グッズが多数商品化された時に、
    こういう絵はかなり使えるんじゃないでしょうか。
    素晴らしいですよ!

    淑大僧正、とうとう奥の手を出しましたね。
    やはり尾藤さんが引導を渡すのでしょうか。
    すぐに終わるともったいない気がしますよ。
    なんか、永遠に続いて欲しい気がします。

  6. びといん より:

    ぷよぱぱさん江
     伏線の件了解です。次回あたりに淑大僧正には死んでもらいますし、一応ラストシーンの構想はまとまっているので、早めにください。
     勝手ながら、よろしくおねがいします。

    すしバーさん江
    「吉行」から「淑大僧正」に生まれ変わった時点で、実はすでにこんな異形の怪人だったんでしょうね。
     俺もベジェ曲線は攻略できてないです。ペイントソフトみたいにペンで描いた線が、ベクトル曲線になるんですよ。
    ↓詳しくは、下記記事を参照してください。http://between.blog.ocn.ne.jp/necopunch/2004/12/expression33.html

    agricoさん江
     あぐりこさんに絵を褒めていただけると嬉しいです。でも、お玉さんの絵があったからこそ、このようにアレンジできたんです。やっぱりオリジナルは偉大ですよね。
     この絵は、ドローソフトならではの手抜き技を駆使してます。実はゼロから描いたのはブルーとパープルだけです。他の3人はブルーのオブジェクトをコピー変形して目と髪形を変えただけ。

  7. 彼女達の能力とオーブロボの性能の差の部分の表現が好きです。
    もどかしい感じがいいですね。
    次回はいよいよ猫背の正体がわかるんですね。楽しみにしてます。

    追伸
    いよいよ、お絵かきに関して孤独感を感じてきましたw
    びといんさん上手じゃないですか。
    いや、「やられた」って思いました。

  8. びといん より:

    通勤マンガーZさん江
     5人の能力とロボの性能の差の描写は、「猫背」を出したいための伏線にしか過ぎないんですが、我ながら気に入ってます(笑)。
     絵は、紙に描いたラフをスキャナで読み込んで、ペンタブレットでなぞってます。
     上手と言われると照れ臭いです。だって「人の全身は描けない」という致命的欠点があるし、顔だけにしてもデッサン狂ってる。
     タブレットで少し練習すれば、この程度のは誰だって描けますってば。

  9. 玉猫戦隊オーブファイブ ネズ神博士登場(7)

     ネズ神博士登場(7)    オーブクローラーが、採石現場上空に到着した。 「ふぅ。さすがに、わし単身では、あのクローラーとやらには太刀打ちできんな」  単身…