玉猫戦隊オーブファイブ ネズ神博士登場(3)

 ネズ神博士登場(3)

 ビーッビーッビーッ……。
 オーブクローラー艦内に警報が鳴り響く。
「来たかっ!」
 自室にいた虎ケン司令は、愛用のサングラスをかけながら立ち上がった。
「タンタン! すまん、そのモカはあとでだ」
「ハイ」
「先に司令室へ上がって確認してくれ」
「了解」
 秘書アンドロイド・タンタンは、私用会話と公用命令とで、きちんと返事を分けている。何気ない事だが、心地よい。
『総員、戦闘態勢。繰リ返シマス。総員、戦闘態勢』
 タンタンの声が流れる中、虎ケン司令も司令室へ急いだ。
「5日間も音沙汰無かったが、こちらの様子を見ていたってのか? で、どこからだ」
「ねずろん反応ハ 猫谷市カラ。新都心官庁街ト 市立公園ノ ホボ中間地点デス」
 タンタンの報告に、そばにいたオーブレッド・ミキが口を挟む。
「猫谷市立公園って……あの、パンサーネズーが出現した場所ね」
「ソウデス」
「すぐ出動すべ!」
 オーブイエロー・マルは、もう立ち上がっている。
「お、おい。お前らだけで進めるな」
 司令が大人げなく割り込む。司令なので、もっともなことではあるが。
「じゃぁ、司令! 命令を。早く!」
「わかっておる。今やろうと思ったのに言うんだものなぁ。おほん。……オーブファイブ、出撃!」
 虎ケン司令は、頭をかきながら命令した。
「ラジャー!」
「おーぶふぁいぶ 出動指令。埼葉県猫谷市ノ 市立公園付近ニ 集結」
『ラジャー!』
 タンタンが、外にいる残りのオーブメンバー各自に通信を入れると、すぐさま、ブルー・ユウカ、ピンク・カオリ、パープル・チオリが返事をしてきた。
 マルが、司令室を出て行きざまに、司令の肩を叩きながら、激励している。
「気ぃ落どすこたぁねぇっす。サクっとやってくっから、コーヒーでも飲んでてけろ」
「いいから、早く行け」
「はぁい」
「やれやれ。皆、少しずつ貫禄が付いてきた、ということか。……っと、馬場ちゃん!」
 司令は、馬場鉄工所とのホットライン・モニタに向き直った。
『はいはい。出してよろしいですな?』
「うむ。尾藤君の出動を許可する」
『すぐに向かわせます』

:-

 猫谷市。
 廃虚ビルの屋上に、ネズロン兵たちを従えた淑大僧正がいた。
 淑大僧正はしばらく腕を組んで沈黙していたが、やがて、杖をひと振り、かざした。
「出でよ、ネズボルト!」
 太い杖の先端から、発せられた波動で、ペントハウスが半壊すると、その瓦礫がガサガサとうごめく。いや、瓦礫の隙間から沢山のネズミが湧いてきて、それらが融合し始めたのだった。
 そのネズミと瓦礫の塊が、あらかた人の型になると、大僧正は、さらに杖をもうひと振りした。
 バチバチッ!
 側の電柱に設置されていたトランスが、凄い音とともに破裂すると同時に、小型の雷のような光が、ネズミと瓦礫の塊を直撃し、一瞬、人型に発光した。
「ブギャァーーーッ!」
 悲鳴とも雄叫びとも付かない、不気味な声とともに、塊は、生き物と化した。
「ネズボルト!」
 淑大僧正に名を呼ばれ、頭に杖の先端を向けられると、ネズロン怪人=ネズボルトは、ゆっくり目を開けた。
「生成されたばかりだ。腹が減っておろう」
「はい、淑大僧正様……」
「送電線を引きちぎり、思う存分電気を食らうがよい。行け!」
「はっ!」
 ネズボルトがジャンプしようと腰をためた、その時。
「(オーブブルー)地球の平和を乱す者を」
「(オーブイエロー)私たちは決して許さない」
「(オーブピンク)オーブの加護と意思のもとに」
「(オーブパープル)力の限り駆け抜ける」
「(オーブレッド)あなた達の横暴は、そこまでよ!」
 裏のビルの屋上から華麗に飛び移ってきた5人。
「(全員)玉猫戦隊、オーブファイブ!」

「待っていたぞ、小娘ども!」
 淑大僧正は、不敵に笑いつつ、ネズボルトに合図をした。
「やれ、ネズボルトよ! 腹ごなしに丁度よい」
「ブギュー!!」

 (4)につづく

 玉猫戦隊オーブファイブ 第13話「出た!最強最悪の新幹部登場だぞ!」より

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コメント

  1. 【玉猫戦隊オーブファイブ】 メイン・リンクリスト (全162編 増加中)

    最終更新日:2004.11.24 AM09:15タイトルをクリックすると主題歌が聞けるよ! 「玉猫戦隊 オーブファイブ」をご愛顧いただき、有難う…

  2. あぐりこ より:

    ネズボルトの「ブギュー」はいいですね。
    オーブクローラー内での虎ケンとマルちゃんのやりとり、楽しいです。
    こうして虎ケンも、だんだん親しみの持てるキャラクターになって来るんですね。
    さて、どんな戦いが展開されるのだろう。

  3. すしバー より:

    さて、こっから戦闘シーンですね。
    どう動くか楽しみです。

  4. びといん より:

    あぐりこさん江
     怪人・ネズボルトは、「チュチュー!」じゃなく、かといってあまり喋れないという設定で、別の雄叫びを考案してみました。
     でも「ブギュー」はなんかネズミというよりネコっぽいですけどね。

    すしバーさん江
     はい。遂に次回は戦闘シーンです。
     いやぁ、まじに、戦闘シーンは苦手なんですわ。つたない挿絵でごまかそうかな。しかし、女子の絵も苦手なのでした(笑)。

  5. 細かい描写がいいですね。
    タンタンが返事を使い分けるとかなんかいいですわ。
    ウルトラマンとかでも電気たべちゃう怪獣とか怪人っていましたよね。あるあるって感じでニヤリ。
    あと登場シーンいいですね。
    「(オーブピンク)オーブの加護と意思のもとに」
    格好いいですわ。
    これ今度つかわせてもらおうかな。

  6. びといん より:

    通勤マンガーZさん江
     登場シーンの口上、Kenさん作の第1話のを流用させていただこうと見に行ったら、ピンクは「おいしいクリームパンを取り返すまでは」でしたので、急きょ創作しました(笑)。
     今回は、戦隊ヒーロー番組の王道ストーリーに挑戦してます。
     しかし、戦闘シーン……。どうしよ(笑)。

  7. 玉猫戦隊オーブファイブ ネズ神博士登場(4)

     ネズ神博士登場(4) :-