界導士ジノイ 01

     序章を読む

 1

 ジノイは、バーテンダーが遠慮がちに差し出したグラスを一気にあおった。
 と、その時、店内の照明が一層暗くなった。続いて、ステージに灯りがはいる。
「みなさん、今夜も、当「クラブ・ストリキニーネ」にお越しいただき、ありがと
うございます!」
 拍手が沸き起こった。
「それでは、お待ちかね。ショウ・タイムのお時間でございます。ご紹介しましょ
う! ストリキニーネが誇るアイドル、セシール・ワ・コール!!」
 うぉぉぉーっ、という大歓声。みな、これを目当てにやってくるのだ。
 音楽が流れだし、ステージの袖から、ダンサーが登場した。華奢な線の身体を器
用に動かし、踊る、踊る。
「せぇーしぃーるぅぅーっ!!」
「セシールちゃーん、こっち向いて!!」
 あちこちから、野太い声援が飛び交う。
 セシールも、それに応えて軽くウィンク。もちろん、営業的スマイルで。
 ジノイも、ステージを眺めている。
「かわいいこでしょう?」
 バーテンダーがジノイに話しかける。やっと動揺からさめたようだ。
「そうだな」
 ジノイは、相変わらず無愛想に返事をするだけだった。
「彼女、危険だな」
「え?」
 言われたバーテンダーはまったく気付いていないようだったが、ジノイは、すで
にセシールを狙っている視線を察していた。
「うまかったよ。ごちそうさん」
 ジノイが、代金分のコインをカウンターに置き、席を立つのとほぼ同時に、店内
のあちこちでも立ち上がる人物の気配があった。
「やばいっ」
 ジノイがそう思った途端、数人の男がステージめがけて走って行った。
「セシールっ!」
「え? なに? 何なの!?」
 セシールは、事態を飲み込めていない。
「来い!」
 ジノイが呼ぶ。それと同時に、もう既にセシールの腕をつかんでいた。
「誰?」
「そんな事は、後でだ。お前、狙われているだろう? 逃げるぞ!」
「え? ち、ちょっと……」
 有無を言わさず、ジノイは、セシールの細い腕を引っ張り、店を飛び出した。
「待て!」
 決まりきった台詞が背後で聞こえるが、当然、待ってはいられない。
「追え! 追え!」
 口々に叫ぶ、その男たちには、ジノイの真紅のローブには気付かなかったようだ。

(c)日向夢想/夢想人企画

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