納骨

 昨日の15日。新しく建てた墓に、親父の遺骨を納めた。亡くなってから5年。ずいぶん待たせたな。
 何も残してくれなかった親父。いや、別に何かを期待なんかしてなかったので、それは構わない。そのかわり、俺も何もしてやらない、と……最初はマジにそう思った。
 しかし、お袋が「墓を建ててくれ。もちろんお前の名義で、お前の家の墓で。だけど、そこにお父さんも入れてやってくれないか」と言って来た。
 親父にあれだけ苦労させられたお袋が、そう言ってくるのなら、しょうがない。
 親父が意識不明になる間際、全身にガンが回って、ろれつもまわらない口でヨダレをたらしながら「今まで、苦労かけたな。すまなかった」と言ったそうだ。それまでは一度も謝ったことが無かった親父が。だから、それでお袋は、親父を許したそうだ。
 俺は、親父を許せない。だが、お袋には、これ以上の苦労はさせたくないからな。お袋のために、弟と半分ずつ負担して、我が家の墓を建てた。

 親父よ、お袋に礼を言えよな。

コメント

  1. あたしは思春期に家を出ていった父親を恨んでなどいませんが、あんなに泣かされ苦労させられていた母親が、十数年経っても「やっぱり一番愛してくれたのはお父さんかな」と言うんです。
    血の繋がってる親子より、肌を重ねた夫婦の方が複雑な繋がり方をしてるのかな〜と子供ながらに思います。

  2. びといん より:

    うるめいちごさん江
    >血の繋がってる親子より、肌を重ねた夫婦の方が複雑な繋がり方をしてるのかな〜と子供ながらに思います。
     そうですね。夫婦には「運命の出会い」はないと、俺は思ってます。偶然出逢い、紆余曲折して結びつく(又は別れる)。親兄弟こそ「運命の出会い」ではないかと。
     うまく言えないけど。