近所は荒川

 江東区東砂《ひがしすな》に住んで10年目。その前は隣の大島《おおじま》に18年。トータルではもう人生の過半になる。
 そもそもは、結婚した当時の職場で社宅を希望したらここになったというだけで、特に思い入れもなかった。

 引越してくる更に10年前、俺が高校生の頃は都営新宿線の終着駅だった東大島駅(隣の船堀駅まで伸びたのが昭和58年)が最寄り駅。
 この辺り——江東区の荒川沿いは、工場移転跡の空き地が多く、また、国家事業のスーパー堤防工事も始まろうとしている時期で、お世辞にも良い風景とは言えなかった。
 その数年後に大ヒットした某刑事ドラマ(97年)の劇中で、当時の湾岸地域を管轄する警察署を「空き地署」と揶揄していたが、ある意味ではそんな感じ。

 余談だが、地域的には比較にならない繁華街(笑)亀戸のサンストリートもできる前で、そこは精工舎の工場が移転した広大な跡地だった。そのサンストリートも一昨年に営業終了したが(元々15年間限定営業の計画だったそうだ)。
 さらに余談だが、メジャーデビュー前後のPerfumeがサンストリート中央広場のイベントに出演しているのを何度か見ていて、そんな折りにテレビ出演した時「あのコ達だ!」と嬉しくなり、以来のPerfumeファンである俺(のっち派)。

 江東区は今昔、運河が多い。残っている運河も数あるが、運河や都電(路面電車)軌道の跡地を緑道として整備していて、まさに『水と緑のまち』といえる。
 スーパー堤防(の是非はここでは語らないが)に合わせて、広大な公園も整備されている。
 俺の散歩コースである、小名木川の東端、旧中川の対岸には、今や遠景では森とも見紛う風景になっているが、引越してきた当時は盛り土造成したばかりで、植えられた細い若木が寂しいものだった。
 小名木川も、いわゆるカミソリ堤防のような状態だったのに、ここ20年くらいで、川岸に降りられる遊歩道に改修されている。
 言ってしまえばそのどれもが人工物だ。公園はもちろん、小名木川も、すぐ先の一級河川・荒川ですらも人工の川(バブル期くらいまでの地図では、北区赤羽の岩淵水門以東は「荒川放水路」となっていた)。
 しかし、この江東区の風景創生は、素晴らしいものだと思う。
 どこにでもあるような駅前再開発や、大型ショッピングモールとは違う好風《いき=粋》を感じる。
(キンジョにナンノトクチョウモナイ、ドコニデモアルヨウナオオガタしょっぴんぐもーるモイクツカケイカクサレテイテ、ナントモもやもやスルキョウコノゴロデハアル。カッコワライ)

 足立区で育ち、荒川を下って現在は砂町に住む俺なので、昔から川の風景は好きだ。最初は悲観と良い所探しが半々だったが、さすがに、四半世紀以上も住んでいれば愛着はわく。と、反省と照れを込めて言っておこう。

この記事は、2018年12月発行の夢想人企画広報紙「あぶすとらくと3G #001」に掲載した「砂町の風に揺れながら 第1回」を改題、当時の紙面の都合で削除した部分の復元など一部修正したものです。時系列表現や情勢などは同掲載時のままです。

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