設計士 尾藤一郎

 尾藤は、かれこれ5時間くらい、CAD画面を見つめている。マウスを握る手はせっかちに動くが、画面上は、線の密度がいっこうに上がっていない。
「主任、ちっとキビシイっすよ」
 馬場は、役職で呼ばれるのを嫌う。ちょっと訝しい顔をしつつも、尾藤を振り返った。
「ん? でもさ、こうやって形になってるよ」
「それは、力技で組み上げた模型でしょ。いや、現実的にも可能な理論だと言うのは解りますけど」
「でしょ。だから、まぁ、詰め込んで欲しいんですわ」
「じゃぁ、もう少し時間をください。なんとかしてみます」
「お願いします。尾藤さんならできますよ、絶対。期待しとるんですわ。焼きそば弁当、食いますか?」
「あ、いただきます、大将!」
 やっと、尾藤の顔に笑顔が出た。
 こんなやりとりは、ただの息抜き以外の何物でもない。
 お互い、気心知れているのだ。
 尾藤は、本来は有能な設計技師だが、かつて、自分が設計した機械の暴走により大事故が起きた事がある。
 機械に細工をして事故を引き起こしたのは正体不明の結社の仕業だというのは、後の調査で判明したが、尾藤は、自分のせいでもあると思い、それがトラウマになり、以後、自ら基本設計をすることは拒み続けている。
 それでも、なんとか現在の立場にいられるのは、尾藤の才能を信じてやまない馬場がここに誘ってくれたからだ。
「しかし、大将……やっぱ、目茶苦茶難しいっすよ、この気球がルーズソックス状にしぼむの。いや、くどいようですけど、現実的にも可能な理論だと言うのは解りますがね……」

ねこぱんち!
♪お玉つれづれ日記♪ 〜美人尼僧説法〜:『息子へ』〜母(馬場ミサヲ)からの手紙
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