ネズ神博士登場(8)[完]
「ふぉふぉふぉふぉっ」
「何者だ!?」
尾藤が、そう叫んで立ち上がると、吉行の亡骸が、ぼぅっと青く光り、消滅した。
「ご挨拶が遅れて、失礼いたした。ネズロン帝国の頭脳。ぶっれ〜〜〜ん! ネズ神博士、と申します。以後、お見知り置きを」
ネズ神博士は、ステンレス製の細い杖を構えつつ、口上した。何かの操作をして、吉行の亡骸を消したようだ。
:-
「何よ、あのおじいちゃん。ネズ神博士? このロボでやっつけちゃいましょうよ!」
どうやら、ピンク・カオリの性に合わないタイプらしい。
「マルちゃん!」
レッド・ミキがイエロー・マルに確認を促す。
「んー、たぶんだめだぁ。80%で1分っくらいだす」
「……使い切るわよ!」
「ラジャー!」
「オーブ・ウェーブ・ハイパー!」
ロボの胸エンブレムが光り、ネズ神博士目がけて掃射する。
ボゥム!
崖の一部が崩れる。
しかし。
ネズ神博士は、無傷で、宙に浮いていた。
「ふぉふぉふぉ。エネルギー切れですかな」
「口惜しいなぁ!」
ミキがレバーを引くと、ロボの右腕が思いっきり振られる。
「遅いのぉ!」
ネズ神博士は、体勢を変えず、ひょいと左にスライドして除けた。
:-
「ネズ神博士……、あいつも……」
尾藤は、そう呟きながら、レーザー銃を撃った。
ショリィーン!
放たれたレーザーは、ネズ神博士の目前で空間に小さい波紋を生じさせて弾かれてしまった。
「やっぱり……」
「じゃ、バズーカで。岩場も破壊しちゃうかもしれませんが」
「肇間さん、無駄っすよ」
「どうして!?」
「ネズ神博士も、磁場操作できる技術を持っているんですよ」
「常温超伝導……?」
「かもしれません。とりあえず引いた方がよさそうですね」
「諦めたまえ。まぁ、今日はご挨拶がてら、淑大僧正の戦いぶりを見物に来ただけじゃ。また改めて、お会いしましょう。ふぉふぉふぉふぉふぉ……」
高笑いとともに、ネズ神博士は、浮遊していった。
その先、少し離れた所に、タケノコ型の小型機動基地が出現し、ネズ神博士は、それに乗り込み、数秒後、再び亜空間に消えた。
:-
「ネズ神博士……強敵ね……」
淑大僧正は確かに倒した。
しかし、今ここに、新たな幹部が登場したのだ。
ロボの操縦席で、オーブファイブの5人は、うなだれていた。
『タケノコ型の物体、追跡不可能です。ネズロン反応も消えました』
工場でサテライトゼットを監視していた謎野Zから連絡があった。
続いて、オーブクローラーのタンタンから伝令が入る。
『任務完了。おーぶふぁいぶ、くろーらーニ 帰還セヨ。ビトウサン、ハジメマサンモ 撤収シテクダサイ』
「……ラジャー」
:-
「ふぅ……」
「じいちゃんのクセに強がったなぁ」
「ネズ神博士……手ごわいわね」
オーブクローラーの司令室に戻って早々、5人は口々に嘆きを発している。
「ご苦労さん」
司令室には、馬場も来ていた。
「馬場ちゃん……司令、申し訳ありませんでした。あんな間近で追い逃してしまって……」
「いや。淑大僧正をやっただけで大手柄だよ」
虎ケン司令は、落ち着いた表情で、ミキたちオーブファイブをねぎらう。
「で、やつ……ネズ神博士と言っていたな……、やつも亜空間との行き来ができると?」
「えぇ、そうなんですわ。尾藤さんが言うには、幻魔城の小型版みたい乗り物に乗っていったと」
虎ケン司令に馬場が答え、続ける。
「それに、あのネズ神博士も、単身で、乗り物に向かって浮遊していったそうですわ」
「尾藤君が言うのなら……ネズ神博士は、常温超伝導の技術を手中にしていると?」
「いや。完全ではないだろうと、尾藤さんは言ってます。あんな中途半端な効果は使わないはずだそうです」
「ネズロンなら、そうかもな」
:-
「謎野サン カラ 通信デス。ねずろん電波ヲ 受信シタソウデス」
タンタンがコンソールを操作すると、メインモニタに、謎野が映った。
「Zさん、どうしました?」
『ネズロンの映像を傍受しました』
「また、垂れ流しか?」
『そうですね。繋ぎます』
謎野の顔がワイプアウトして、変って表示された映像は、何かの式典会場のようだった。
:-
「チュチュー! チュチュー!」
幻魔城の大広間。手前の入り口から奥の演壇まで、濃紺のじゅうたんが敷かれ、その左右には、無数のネズロン兵が整列し、連呼している。
「チュチュー! チュチュー! チュチュー!」
「チュチュー! チュチュー! チュチュー!」
ネズ神博士が登場し、ゆっくりとじゅうたんを歩いていくと、どどっ……と、声援の並が、それに追従する。
「諸君……」
演壇に登るやいなや、ネズ神博士が声を発すると、場内は静まり返った。
「……淑大僧正は、諸君らに、再び奮起してもらいたく、体を張ったのだ!」
「チュチュー! チュチュー!」
「チュチュー! チュチュー!」
大喝采。
:-
ある建物の一室。研究室らしき、薄暗いその室のデスクで、青年がモニタを凝視していた。
『チュチュー! チュチュー!』
ネズ神博士の演説が映っている。
『諸君……』バリッ!!
モニタにネズ神博士の顔が映った途端、青年は拳でモニタを破壊した。
青年は、血がにじむ拳を舐め、ニヤリ、と笑った。淑大僧正そっくりに頬をゆがめて。
:-
「だいぶ、増えてますな。まさにネズミ算式ですわ」
馬場は溜息まじりに、しかし、モニタを凝視して言う。
「これが……敵……」
ミキが、つぶやいた。
『諸君らの活躍が、淑大僧正の魂を喜ばせるのじゃ!』
『チュチュー! チュチュー!』
『そのために、わしは復活を決意した! もはや、敵なしじゃ!』
『チュチュー! チュチュー!』
「何をいうんだ!」
虎ケン司令が絶叫した。
「世界征服をもくろむネズミ集団が、何をいうんだ!」
『今こそ、決戦の時じゃ!』
『チュチュー!』
『我らが魂、邪魔皇帝陛下と供に! ネーズ・ネズロン!』
『ネーズ・ネズロン! ネーズ・ネズロン!』
『ネーズ・ネズロン! ネーズ・ネズロン!』
:-
馬場鉄工所、研究室。
「大将、これって……」
『Zさん、なんです?』
「今、ざっとスキャンしてみたんですけど、これ、垂れ流しじゃないです! ピンポイントで、サテライトZに送られてきた波です……」
『なんですと!?』
『ネーズ・ネズロン! ネーズ・ネズロン!』
『ネーズ・ネズロン! ネーズ・ネズロン!』
『ネーズ・ネズロン……』
了
玉猫戦隊オーブファイブ 第13話「出た!最強最悪の新幹部登場だぞ!」より
ねこぱんち!
→不条理み○きー:【玉猫戦隊オーブファイブ】 メイン・リンクリスト
コメント
ぷよぱぱ総監督にいただいた宿題と、他にふたつ、ネタを振っておきました。
後を宜しくお願いします。
俺は、この後、馬場鉄工所を舞台にしたお話のネタをいくつかもってるので、本編はお休み(笑)。
【玉猫戦隊オーブファイブ】 メイン・リンクリスト (全177編 増加中)
最終更新日:2005.01.14 AM08:34タイトルをクリックすると主題歌が聞けるよ! 「玉猫戦隊 オーブファイブ」をご愛顧いただき、有難う…
★びといんさん
お願い聞いて頂き、感謝です!!
この回も、読み応えがありましたね。
(1)から通して読むと、より凄いっす。
最後のシーン、例の番組のあのシーンを思い出しましたよ。^^
サブストーリーもお待ちしていますね。
ではでは。
何か仕掛けがあるみたいですね。
仕掛けの種はわかりましたが、どう芽を出すか楽しみです。
次も楽しみにしてますです。
っていうか、個人的意見で申し訳ないんですが
なんだかネズ神博士がこの間の秋葉原の変な人とダブるんですよね・・・
なんだか・・・なんだか・・・困っちゃうな〜(苦笑)
ぷよぱぱさん江
こんな感じでよかったですか。
しかし、改めて最初から通して読むと、ネズ神博士は、あまり活躍してないですね。
そう、最後のシーンは、あの番組のあのシーンのパクリです(笑)。謎の青年に「坊やだからさ」と言わせたいのを、ぐっと我慢しましたよ(笑)。
すすきのさん江
仕掛けの種は簡単にわかりますでしょ。でも、俺は種まきしただけですから(笑)。
サテライトZの危機とか、最終話に繋げていただければうれしいです。
てりこさん江
あー、いや、ネズ神博士は、じじいですから。キャラ絵は一応書いてあるんですけど、公開するタイミングを逃してしまってます。
というか、てりこさんも、読んでくれてたんですか!
完結お疲れさまです。
ネーズ・ネズロン!
このシーンはもう、びといんさんが書きたかったシーンなのでしょうね。w
なんか俺も、好きなシーンです。
ああ、俺も時間作ってやらなくちゃ。
ほんと最近心苦しいです。
ええ、がんばります。
ネーズ・ネズロン!
マンガーさん江
ご察しのとおり、この話のラストシーンは、「ネーズ・ネズロン!」に決めてました(笑)。
で、捲いた種3つ。
ひとつめ、ネズ神博士の最期=イカネズーとの決戦は、まぁ、俺が書きます。
淑大僧正似の青年は、ぷよぱぱさんに渡しますね。他の人へ振るでもいいですが、采配お願いします。
サテライトZが狙われてる件は、すしバーさんかマンガーさんでしょうかね。
おぉ、完結しましたね。淑大僧正が死んだのはいいけれど、ネズロンはかえって強くなったみたいですね。オーブもネズロンも、いったいどこまでスケールを広げていくことやら。
ネーズ・ネズロン!で私はシーザーとクレオパトラの世界を思い浮かべましたよ。これでネズロンにも紅一点がいるといいですね。
近いうちに私もアップします。パソコンの不調で待機してました。
なかなかの長編、読み応えがありました。
あぐりこさん江
長編にお付き合いいただき、ありがとうございました。
ネズロンの紅一点……ダークチャーミーが居ますが?(笑)
あぐりこさんの新作も楽しみにしています。
風雲!山ノ神 1
1. 平蔵とお多絵平蔵爺さんはマルの母方の祖父に当たる。齢82。若い時分は和牛30頭を越える近在では大規模な牧場主だった。寄る年波で今ではたった3頭に減ってしまってはいたが、それでも未だに現役の牛飼い。マルの実家から車で30分ほど離れた山奥に開拓で入ったのが