玉猫戦隊オーブファイブ ネズ神博士登場(1)

 ネズ神博士登場(1)

<特務機関KINUSAYAの諸君、我はネズロン帝国の指揮参謀、淑大僧正である>
 オーブクローラーでもサテライトZからの回線を受け、司令部の天井スクリーンに、淑大僧正の姿が映し出される。
 映るその顔は、威厳……というよりは、一方的な威圧感に満ちている。
「総員、乙種警戒待機!」
「了解。総員、乙種警戒待機」
 虎ケン司令の指示に、秘書アンドロイド・タンタンが復唱。
 警報。
 その途端。
「オツシュ」
「オツシュケイカイタイキ!」
「オツシュケイカイ!」
「ソウイン、ソウインタイキ」
「オツシュケイカイ」
「オイッース! コエガチイサイ!」
 でじー達が、一斉に騒ぎ出した。
「えぇい、お前達、うるさい!」
 虎ケン司令が怒鳴る。
「でじー(ず)ハ 「動揺」トイウ 感情ヲ 覚エ始メタ ノ デス」
 タンタンが冷静に応える。
「うむぅ……。まぁ、いい。オーブファイブにも通報をかけてくれ」
「了解」
<オーブファイブはじめ、諸君らの活躍、誠に敬服する>
「Z君。これは?」
 工場(こうば)とのホットライン・モニタに映った謎野Zが、即答する。
『まだヤツらが垂れ流している電波をサテライトZが受信しただけです』
「なるほど。これを見越して、淑大僧正は、一方的に送信してるんだな」
『はい。先程のネズロン反応も、たぶん、これの事だと』
「まだ接続はするな」
『はい、司令』

:–

「シャワーコックをひねった途端に、ブレスレットが鳴ったわ。ネズロンが現れたの?」
 ミキが、バスタオルで髪をぬぐいながら、研究室に戻ってきた。
<しかし、我々偉大なるネズロン帝国も、もう容赦はしない!>
 淑大僧正の一方的な通信は、なおも続く。
「え!? 回線に入ってきたの?」
 ミキは、通信モニタと謎野を交互に見る。
「いや。サテライトZが傍受……というか、ネズロンが無差別に送り付けた通信を、サテライトZが受信したんです。こちらからはまだ接続してませんよ」
「小癪ね。なんてずうずうしいんだろ」
<今のうちに手を引くことだな。我々は、この地球を滅ぼしたりはしない!>
「何を、訳わかんね事いってんだ!」
 珍しく馬場が真面目な顔で怒っている。
<この通信は、もちろん見ていることだろう……尾藤一郎>
 淑大僧正が、突然、尾藤の名を告げると、研究室のメンバー全員が、尾藤に目を向けた。
「!?」
 尾藤本人は、一瞬驚いたが、すぐに、通信モニタを睨みつけた。
<尾藤一郎、ご苦労であった。もうネズロン帝国に……邪魔皇帝陛下のもとに、戻るがよい。貴君の任務は終了した>
「尾藤さん!」
 皆が、一斉に尾藤に声を浴びせる。いや、馬場だけは、黙って、尾藤を凝視している。その視線の先は、尾藤の目。
「!! 貴様ぁ! どういうつもりだぁ!!」
 尾藤は、馬場から視線をそらさず、怒鳴った。もちろん、モニタの先の淑大僧正には聞えないが、尾藤は、発作的に叫んでしまったのだ。
「Zさん。回線、ネズロンに繋げてください」
 馬場がいう。やはり、尾藤から視線をそらさない。
「し、しかし……。ここの場所が特定される恐れが……」
「繋いでください!」
 謎野の言葉を遮り、馬場が一喝すると、謎野は、無言で端末機を操作する。
 が。
「だめです。接続できません」
『今は許可するわけにはいかん!』
 虎ケン司令だ。
「しかしっ! 尾藤さんが!」
『馬場! てめぇ、殺すぞ!』
「……了解。あんたに殺されるなら本望だが、今はちょっと納得いかねぇ。頭、冷やしますわ」
『おう』
<尾藤、あの場所に迎えを出す>
 そういうと、モニタから、淑大僧正の姿は消えた。
 その時、ミキは、思い出した。
(あの、初めてオーブに出会って、宿命を知った日も……尾藤さんは、確か……淑大僧正と……)
「大将! 俺は……俺は!」
 尾藤は、しっかりと馬場の目を見つめて、訴えた。
「尾藤さんよぉ……」
 馬場が、ひと呼吸置いて、続けた。
「なめんなよ。あんたは俺らを信用してないのかい?」
 次の瞬間、馬場は、いつもの笑顔に戻った。
「さぁさ、作戦会議だね」
 大岳が、いつの間にか、手にどぶろくの一升瓶を下げている。
「まだ、乙種待機だから、私も、もう少しここにいて大丈夫ですよね」
 ミキが言うと、
「ここの方が、ある意味、情報早いっすよ!」
 謎野がおどけて返事をする。

:–

 通信を切ったあと、淑大僧正は、ひとりで悦に浸っていた。
「ふはは。これで、オーブの連中も仲間割れをするだろう。尾藤が居なくなれば、やつらが、我ら幻魔城の亜空間航行に追いつく技術の開発が、ますます遅れる。うまくいけば、尾藤は、こちらに寝返る。そうすれば、願ったり叶ったりじゃ!」

 (2)へつづく

 玉猫戦隊オーブファイブ 第13話「出た!最強最悪の新幹部登場だぞ!」より

ねこぱんち!
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コメント

  1. びといん より:

     なんというか、まず淑大僧正には、すでに指揮官能力もなく、邪魔皇帝に見放されている徹底的に間抜け者にしちゃいました(笑)。
     あと、尾藤も、言い得ぬ過去があるとはいえ、情けない男。馬場や謎野は、かっちょよくしてみました。
     お子様向けの戦隊ヒーロー番組なので、性格付けは単純明解に、と。

  2. 【玉猫戦隊オーブファイブ】 メイン・リンクリスト (全132編 増加中)

    最終更新日:2004.11.11 AM01:45タイトルをクリックすると主題歌が聞けるよ! 「玉猫戦隊 オーブファイブ」をご愛顧いただき、有難う…

  3. ひゅーーー。かっこいい展開。
    ここにきて敵の揺さぶりも入ってきたわけですね。
    尾藤さん、大将、指令が感情むき出しになるシーンはリアルでいいですね。
    大将の「なめんなよ。」はかっこいいですわ。

  4. ぷよぱぱ より:

    ★びといんさん
     淑大僧正が、かなり姑息な手に出てきましたね。
     そしてネズ神博士の登場はいつなのか?
     マルチで話が進んでいるんで、難しい^^

  5. お玉 より:

    ミキが、シャワー浴びたあとタオルドライしながら
    現れるところ、いいですね。
    まっすぐな黒髪が濡れてつやつやしてますね。

    デジーずが騒いでいるところもリアルです。
    このごろ、デジーたちがかわいくて仕方ありません。

  6. すしバー より:

    大僧正、こういう人だったのか、と驚きました。
    となると、ネズ神博士がどういうキャラなのか非常に気になるところです。

  7. agrico より:

    戦慄の場面です。
    丁々発止の心理戦になりましたね。
    鉄工所の面々の心理描写、うまいですよ。
    なぜ大岳あぐりはどぶろくを持ってるのでしょう。
    面白いです。

  8. Ken より:

    今までのいろんなエピソードが伏線として
    生きてきましたね。
    もう、わくわくしてます。

  9. びといん より:

    通勤マンガーZさん江
     たまには大将にも「マジな漢」を演じてもらわないとね(笑)。

    ぷよぱぱさん江
     もうこの回の大僧正は、落ちぶれてます。
     場面転換はありますが、基本的に時系列に進んでますよ。マルチというほどではありません。
     ネズ神博士はもう少し後です(笑)。

    お玉さん江
     ちょっと萌えサービスを入れてみました。俺に書かせても、これが精いっぱいです。

    すしバーさん江
     すみません。大僧正はガキっぽいバレバレな作戦で自滅していく設定にしちゃいました。
     ネズ神博士も、他人にお構いなしですが、研究に没頭する科学者って感じです。ただし、悪の科学者。

    agricoさん江
     大岳さんは、「作戦会議」と称して、これから宴席を設ける口実なのかもしれません。

    Kenさん江
     えぇ、最低でも自分が捲いたエピソードは、とりあえず収束させたいと思ってます。

  10. BLOG STATION より:

    【玉猫戦隊オーブファイブ】次回予告だぞ!

    【玉猫戦隊オーブファイブ】ナレーター募集!の結果発表・第1弾!です。音声ファイルは、すべてMP3形式。それぞれ約0.3KBです。(文中敬称略)◎第2話『「…

  11. 玉猫戦隊オーブファイブ ネズ神博士登場(2)

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